これから寒くなる季節ですね。
服装と暖房に気を使うようになります。
 
「遠赤外線放射」をうたった製品は数多くあり、
そうでない製品より「暖かい」といわれていることがあります。
ところが、「熱源」として働く機構を持たない製品の場合、
実際には暖かくはなりえない可能性があります。
それどころか、かえって早く温度を下げることもあります。
 
なぜかというと、熱の移動は、温度の高い物体から低い物体へ向かうと決まっていて、
低温の物体から高温の物体へ移動することはないからです。
だから、身につける製品の温度が人の体温より低かったら、
熱の移動は人から製品に向かうことになり、決して「暖かくなる」ことはありません。
 
このような場合に「暖かくなる」とすれば、それは遠赤外線の働きではなく、
製品が熱を逃がさないようなつくりになっている、つまり断熱効果による
保温性
を利用していることが考えられます。
科学的な根拠を「遠赤外線」とすることは正しくありません。

「温度を上げる」のではなく、「熱を失いにくくする」というのが正しい理解です。
そして、その働きをしているのは遠赤外線ではなく、主に「空気」の熱伝導率の低さを利用した
断熱効果か、製品が持っている比熱容量の大きさによるものなのです。
 
 
では「早く温度を下げる」のはどんな場合でしょうか。
 
一言で言えば、
その製品が持っている熱を「遠赤外線」の放射という形で失ってしまうため、
そうではない製品よりも早く温度が下がる。

 
これは、製品に熱源の機能がない場合です。
 
熱源というのは、石油ストーブなら石油の燃焼、電気ストーブなら電流のジュール熱、
使い捨てカイロなら鉄粉の酸化反応による発熱、などが該当します。
ほかには、手をこすり合わせるときの摩擦熱や、放射性物質が持っている熱などがあります。
これらの熱源がない製品の場合、そもそも周囲より高い温度を出すことができません。
仮に一時的に高い熱を発生させたとしても、その熱源を取り去れば、
残りの熱を放射して温度が下がり、周囲と同じ温度になってしまうのです。
そして「遠赤外線を多く出す」のは、その製品が持っている熱を
遠赤外線の放射という形で失っているということですから、早く温度が下がります。
 
もし、この理屈で温度が高くなるとすれば、
ストーブを消しても部屋がずっと暖かいまま
ということも起こりえるのですが、もちろん、そんなことは絶対に起こりません。